彼が家に来たのは真夏のある日のことだった。
Nice to meet you ブロンドの髪に、空の色の映る水面のような瞳 北欧の方からやってきた彼と過した二週間のお話。 朝。起きてくると同時に握手で Good morning!! さわやかな顔した彼の握力は半端じゃなかった。 私も負けじと握り返す。握力測定を思わせるほど力強い握手。 朝食を食べる。 彼はパンとベーコンと卵とサラダにヨーグルトとジュース。 私はご飯に味噌汁に目玉焼きにサラダ。 違うものを食べながら、チラチラと見ていたら。 あ。(-▽-;)目が合っちゃった。 と、とたんに流暢な英語で話しかけられる。彼の母国語は英語じゃないのにペラペラ。言っていることは解かるんだ。部分部分の単語を聞き取って、うんうんと頷いたりイエス・ノーで答えることは出来た。でもね。 最後にハテナで終わる文章。イエス・ノーではない答を求められて、私はとっさに何も言葉の出てこない自分を発見したわけ。まるで、家のペットの犬が何かを問いかけられて答える言葉も持たずにきょとん。とする瞬間みたいな顔をしてたんじゃないかと思う。 察して下され。私は日文科の人間で、断じて英文科じゃない。受けてきた教育は、受験対策文法と長文読解オンリー。因みに英語は中学の頃から苦手科目ナンバーワンの座を数学と競っていたのでございます。 そんな私に、おかまいなし。ペラペラ続く英語(。。) 私の頭、まっしろ。 英語、英語・・・。ええっとBe動詞と一般動詞と三人称単数が・・・ 思い出す断片は、断片でしかない。大学に入って一年目に基礎英語の必修授業受けて以来、苦手だからと英語の授業を避けてしまった私は2年近く英語を見てない。絶対絶命?!ああ。こんなことなら、英語勉強しときゃ良かった。とか。グルグルと考えていたら朝食修了。ほっと一息ついた瞬間に彼はさっと立ち上がる。 まだ何かあると? 何処行くのかと思ったら、向かった先はキッチン。流しの前に立っていきなり皿洗いのお手伝い始めちゃった。慌てて、私も彼の隣でお皿の片付けのお手伝い。彼が食器棚にお皿を戻す時に、いつもと違う場所に戻しちゃったりするんだけど、英語で場所が違うと説明できる自信のない私は笑顔でThank you! しかし!! 手ごわかったのは、英語だけじゃなかった。 夜。 Good night!! その挨拶とともにガシッとハグ。慣れない習慣に私、硬直。 ぶ・・・文化の違いってこういうことか。 朝は力強い握手にはじまり夜は熱い抱擁に終わる。そんな彼との生活は始まったばかりだった。 ようやく私が握手とハグの挨拶にも慣れ始めた頃、彼と私と両親と旅行に行った。 相変わらず私の英語は進歩せず、頑張って、必死の思いでたどたどしい英語の文章を、たどたどしく発音したら、彼に「?」って顔をされてからは、仕方ないから日常英会話って書いてあった本を買って、それを片手に私の言いたいことに近いものを指差して、彼も、その中から答えを探して指差して。ちょっと通じるようになった。肩を組んで撮る写真にも慣れたし、良い感じに異文化交流できていると思っていたら。 再び、文化の違い出現。 私が重い荷物を持っていたら、彼がさりげなく持って行ってくれた。車に乗ろうとしたら、さりげなくドアを開けてくれた。ホテルで食事をするとき、椅子を引いてくれた。等々。要するに、彼はレディーファーストの国からやってきたわけで。嫌味な感じをさせることなく、それらをやってのけてしまったんです。 掃除や皿洗いの家事はやってくれて、とことんレディーファースト。そんな彼の話をしたら「理想的じゃない?!」と友達には言われたけど、理想的ばかりとは思えなかった。確かに家事の面では理想的かもしれないけれど「レディーファースト」らしい扱いをされたときに、何処となく気恥ずかしさというか、居心地の悪さを感じてしまったんですよ。やっぱり慣れていないの。文化の違いって難しいね。 さてと。これだけ長く書いておいて、結局何が言いたいかというと。 「英語は勉強しておいたほうが良い」 ってコト。 高校生の頃は英文科に行くわけじゃないから、英語はいいや。と思っていた自分がいたし、大学に入っても「英文科じゃないんだし」を逃げ言葉にしていた。でも、良く考えてみたら、外国から来た方にとって私が日文科で学んでいる内容は、スゴク魅力的で聞きたい内容なのではないか。という点に気付いたんです。例えば『源氏物語』ならば、千年も昔に女性が書いた文学が残っているんだ。とか、あらすじまで話せたらもっと楽しい。 今回、彼と英語で話せなくて、私は悔しかった。日本文学科で、せっかく日本文化や日本文学について勉強しているのに『源氏物語』のことも『万葉集』や『古事記』のことも、何一つ英語で上手く説明できない自分がもどかしかった。 高校生の頃に学んでいた英語が言葉であり、人に物事を伝えられるものだということを私は改めて知ったのです。高校の時の英語文法がどんなに重要な勉強だったことか。今まで、英語を真面目に勉強してこなかった自分を恨みつつ、毎日単語を10個覚えようと決心しました。最初の一歩が多すぎると長続きしないじゃない。だから、ちょっとだけ。10個。コツコツ地味な努力だけど、頑張ろうと思います。 レディーファーストの国からこんにちは。彼が来て、彼と出会って。 ―苦手な、大嫌いな英語を、初めて自分から勉強しようと決心した今年の夏―
2008,09,16, Tue 03:17
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