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教育実習に行くためには、事前に実習校から内諾をもらう必要がある。
去年の3月。実習内諾をもらいに母校を訪れた時、昔、生徒指導担当だった恩師は、教務主任になっていた。
「おー、お前、元気にしてたか。しっかりしごいてやるから頑張れよ」
丸い顔をして、恩師は晴れやかに笑った。

内諾は、すぐに下りた。8月31日から、9月18日まで。私は長野の中学校で、実習を受けることに決まった。

8月の事前打ち合わせで初めて、指導教諭に会った。
一目で、いい先生に当たった、と思った。実際、その先生は、学年主任と研究主任を兼任する、温和で面白い、優れた先生だった。私をしごくのに、これ以上ない、最適な先生が、担当してくださることになったわけだ。

実習の一週目は授業見学、二週目から一年生と三年生に国語を教えた。
先生の授業を見ながら、自分で授業を進めながら、次の授業計画を立てていく。主眼の書き方、中心発問のしかた、生徒の様子をつかみながら導入をすること、生徒の発言を生かしながら授業を進めること…等々。難しくも、大切なことをたくさん学んだ。私は、困ったこと、疑問・質問があれば、何でも聞いてみた。そのたびに、先生はたくさんの話をし、いろんなことを教えてくださった。毎日、実習日誌を書いて職員室に持って行き、先生とお話するのが、私のひそかな楽しみだった。

実習中、何度か泣きそうになったこともあった。
21年そこそこしか生きていない私だが、うまくいかないこと、つらいことがあって、様々な局面に立っては、自分がどう生きていくべきか、思い悩んできた。高校・大学と、大人になっていけば、正しいことが必ずしも通らなかったり、「巧く」生きていかなければならなかったりすることもなんとなくわかってきて、悔しかったり、自分も他人と同じように、そうして生きていくべきかと考えたりした。

そんな私の目に、思春期の今を生きる子どもたちの姿は、とても美しく映った。生きていくうえで、うるわしいもの・本当に大切にすべきものを知っていく子どもたちに、私も、自分の原点を思い出させてもらった。

私が困っていると、惜しみなく助け船を出してくださる先生にも、感謝の気持ちでいっぱいだった。様々な場面を見せてくださったり、丁寧に指導していただけるのがありがたくて、それに応えたいと思うのに、実際にはなかなかうまくできなかった。それでも、変わらずに指導していただいて、うれしいような、自分が情けないような気持ちになって、ちょっとめそめそしながら帰った夜もあった。

だが、そんな思いとは関係なく、別れはやってくる。
実習の最終日に、担当クラスの生徒たちが、お別れ会を開いてくれた。
子供なんて案外あっさりしたもので、昼休みから、「せんせーもう帰んの?バイバーイ」なんて、ニヤニヤしていた。私も、「随分冷たいじゃん、傷つくわー」とニヤニヤした。お別れ会の最後は、クラス全員による歌、「負けないで」だった。子どもの歌声に、私はどうも弱いらしい。…見事に泣かされた。そんな私をみて、生徒はドン引きだった、かもしれない。

  *   *

果たして私は、生徒にとって、良い実習生たりえただろうか。
一人の人としての、私の人柄や、大切にしていることを感じ取って、生徒が慕ってくれたなら、とてもうれしい。が、真相はよくわからない。

私が背中で語れるようになるには、まだ何十年かかかるだろうが、3週間、私にいろんな話を聞かせてくださった指導教諭の先生の後ろ姿は、私にとって、忘れられないものになるだろう。

「いつか、先生のような教師になりたい」

当分私は、その背中を追いつづけていくことになるだろうから。

2009,09,25, Fri 21:57
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