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九州に行っていた、ある女子大生が
「吉野に行きたいなぁ。」
と、博多駅の新幹線乗り場で独り言を言った。

彼女は、大学4年生。原稿用紙60枚以上と定められた卒業論文を12月18日の期日までに書いて提出しなければならないという現実的に差し迫ってきた課題を抱えていた。

八雲さす 出雲のこらが 黒髪は 吉野の川の 沖になづさふ(『万葉集』巻三・四三〇)

出雲娘子が溺死し、吉野で火葬された時に柿本人麻呂という人が作った歌について勉強していた彼女は、何だか、色々こんがらがって迷走する中で、突発的に吉野川が見てみたくなったのだった。

実際に、吉野の山川を見てみたら何か実感として何か得られるのではないか。
秋の青空は青く澄んでいて、紅葉していたらさぞ美しいだろう。
今行けば、正倉院展にも行くことができてしまうではないか。

女子大生は思った。
そうだ、吉野行こう。

「 ♪ 」

大きな声ではとても言えない。

11月に入って、いよいよ卒論も修羅場というこのときに。
吉野まで行ってきちゃったハート

以下は、わたくしの吉野旅行記である。

大和上市駅で電車から降りてタクシーに乗って、吉野川まで行きたいと言うと、運転手さんは怪訝な顔をした。
「吉野山やないんですか。」
「まずは吉野川をどうしても見たいんです。」
ろくな下調べもせずに、唐突に吉野まで来ちゃった私の頭には、とりあえず吉野川に行くことしかなかったのだった。
運転手さんは「ほな、宮滝の景色のええ場所に行きましょか。」と言って、吉野宮があったとされる宮滝近くの柴橋まで連れて行ってくれた。
「すみません、川辺まで降りたいのですが、どこから行けるでしょうか?」と聞き、
岩場をふらふらとブーツで歩いて行こうとする私の背中に向かってタクシー運転手さんは言った。

「飛び込まないで下さいよ!!!」


・・・
そりゃ、私は、昔の感覚を体感したいな~。って思うと、家の庭に生えてた山椒の青い実をガリガリ食べちゃったり、銭湯の湯船で誰も居ない時を見計らって「なづさふ」ってどんな感じかな~ってやってみて溺れかけたりしちゃうような体当たり人間ですけども。さすがに秋の寒い時期に実際の吉野川で実践するなんて、さすがそこまでしませんよ!!ただ、ちょ~っと、岩の上から水を覗き込みたかっただけです。

あまりに頼りない足取りの私を見るにみかねたのか、運転手さんは私の手を引いて岩の上から川が覗き込める場所まで連れて行ってくれました。運転手さんが美青年だったら、旅のステキな思い出だわね~。とかちょっと邪念と妄想が(笑)いえいえ。とても親切で優しいステキなおじさまでした。


↑これは、柴橋の上から見た吉野川

↑これは、岩の上を歩いていって覗き込んだ吉野川

実際に見た吉野川は思っていたよりも、さらに、川幅の狭い川でした。
う~ん。やっぱり、グーグルで画像検索して写真で見るのと実際行ってみるのは感覚的に違うなぁ。と実感。

川をながめてしばしぼんやり。吉野葛の蔓に引っかかって転びそうになったりしながら
川辺を歩いて、またぼんやり。
時々強い風にのって黄色い落ち葉がひらひらと舞う。川の水面にすべるように落ちた葉が、水流にのって、くるくると一定の方向に流れていったり岩に引っかかって止まったりする。吉野川の川辺で、溺死したという出雲娘子を歌った人麻呂に思いを馳せて、自然に手を合わせていた。


吉野川を眺めた後、吉野山に登って飛鳥の方向を見てみました。

山頂からは、紅葉した桜の赤がちらほら見えました。春の桜で有名な吉野だけれど、閑散とした寂しい秋に紅葉した桜もまた良いものです。

色々な人に出合って話をしながら、吉野の地を自分の足で歩いてみた
大学4年生秋の旅は、きっと忘れないだろうな。

さあ、卒論書くぞ!

2009,11,04, Wed 21:47
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