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今住んでいるアパートに越して来たのは、去年の3月だった。

小さなアパートの住人たちは、全員が日本女子大生。
中でも、私の下の部屋住む、4年の先輩は特別親切で、私をよく気にかけてくれた。

彼女も私と同じく、もとは寮生。穏やかで、理知的な人であった。
大学で会えばよく話をした。風で飛んだ洗濯物を、先輩が届けてくれたこともあった。

嬉しいながらも、なぜそんなに親しく接してくれるのか、ちょっと不思議にも思っていた。

  *   *

先月のある朝、物音がするので目を覚ますと、下の部屋に業者が来て、掃除をしているらしかった。
知らぬ間に、あの先輩はどこかへ引っ越していたのだ。

黙っていってしまったのかと思うと、寂しく、ちょっと呆然となった。

実家に帰ったのか、それとも東京で就職先を見つけたのか。
ベッドに寝転んだまま、ぼんやりと先輩の「これから」に思いを馳せた。

そしてそのとき、先輩が私に優しかった理由も、何となくわかった気がした。

私が最初に、引越しの挨拶に伺ったとき。

「どんな人が住んでいるのだろう、遅くて迷惑な時間じゃないだろうか、普段の足音が響いて迷惑になっていないかな・・・。」

ドキドキしながら、初々しさ丸出しで挨拶に行った。
そういう姿をみて、先輩は何か思うところがあったのかもしれない。
1人暮らしを始めたころの自分に私を重ねて、力になってやりたいと思ったかもしれない。

先輩の瞳にはいつも、そんな優しい想いがこもっていたように思うのだ。

   *   *

先日、先輩の住んでいた部屋に、新しい入居者がきた。
日本女子大の新入生で、私にもきちんと挨拶をしに来てくれた。

あの先輩は去り、そこに新しい人が来た。

人と人とが交錯する、その一瞬はあっけない。けれども私の中で、先輩の思い出は、しっかり胸に残っている。
短い付き合いだったが、不思議と心に残る出会いであった。

ずっとかかわり続けたいと思う、大切な人との出会いがあれば、こんな風に、ほんの一時の思い出が、ずっと残っていくような出会いもある。

人と人が出会い、別れていくというのは、不思議なことだと思った。

・・・先輩がどこかで、充実した新生活を送っていることを願いつつ、私も自身を奮い立たせ、がんばっているこの頃である。

2009,04,15, Wed 06:00
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